事例としての京都

 京都は日本の歴史や文化がその景観に詰まっており、外国人観光客に好まれる地域です。しかし、ブランドが確立されているからといって、県民が左団扇で暮らしているわけでもありません。あの街並みを維持するためには相当な努力が必要なのです。また、そうした努力の成果としてのイメージを拝借し、ただ乗りする企業(フリーライダー)も少なくありません。これらのフリーライダーが地域づくりの基本方針を踏まえていれば問題は起こりにくいのですが、営利を優先するあまり、例えば地域の景観を損ねるような店舗を構えたりもします。

 京都の魅力の一つともいえる仏教文化は、明治維新後に起こった廃仏毀釈運動によって窮地に立たされます。結局世論の高まりによって古社寺保存法が制定され、爾後京都市内を住居地域、商業地域、工業地域、未指定地域に区分した上で、建築物の高さに制限を設けることになります。戦後もこの流れは止まらず、60年代には古都保存法が制定され、景観保存の制度が堅固に築き上げられたのです。他方、市街地の景観はなおも論争が続きました。最終的には北部を保存して南部を商業地として開放する方針にまとまり、ユネスコと文化庁の勧告も相俟って、市街地景観も野放図に変わることはなくなりました。

 京都市の観光政策のユニークな点は他にも見られます。その一つが富裕層をターゲットに定めることです。京都市は富裕層を、「経済力にあるのに加え、文化的素養が高く、京都の魅力に関心が高い層」と定義しています。京都市は海外に情報拠点を設け、高級ホテルの誘致やILTMへの働きかけに成功し、北米富裕層が読者の雑誌、トラベル・アンド・レジャー誌にも取り上げられました。

投稿日:

Copyright© インバウンドの歴史と現在の訪日外国人の状況 , 2018 All Rights Reserved Powered by STINGER.